猿板

遊山黒子衆SARUの記録

彼岸の奥物部の森 木の子

                                                   

 伏流したヌル谷に
薄雲が透かした木洩れ日が
美しい模様を描いていた。

◆森の中のもう一つの森
 この森の平坦地は山の一部が
安息角越えて落盤した渓に流れ込んだ
土砂が堆積して出来た山の中の平坦地。
白馬岳の双耳峰も同じ落盤で出来た地形。

 今日はここで泊まろうか。

上空では寒暖押し合っている様で
俄雨を過ごす東屋があると安心だろう。

 山ではいつも最悪想定。

                                                       

 「私ここ初めてです!」

 そうだったな。
ここも案外気持ちいいぞ。
荷を置いて一休みしょうや。

◆沢を溯る
 ここから登山道は使わずに
ヌル谷をキノコ探しながら溯り
tochikoの森の母に会いに行った。

 「プチ沢登りですなぁ」

かつて登山道がない杣らは
沢に添って山に入ったという。

 これがほんまの杣道だろう。

 

◆茸のこと

 「あった!マスタケ!!」

Y'sが好きな茸が待っていた。

 ヒラタケも生えはじめた。

                   

 “茸は開いたら取ってえいぞ”

 開いたら胞子を出したのちで
籠で運べば胞子が広がって喜ばぁよ。

 杣は笑いながら教えてくれた。

 

 杣らも永く食用とした菌類は
植物採取でなく法には触れないが
確かな経験と知識は自己責任だろうな。

     

◆大きな木の下で

 「もう終わったでしょうか」

tochikoの森の母の元に辿り着いた。

 「9月に入れば団栗
     落としはじめるきね」

 山の動物たちは
毎年この時を待っている。

 山の命とは競争出来ないな。

 そんな話も森の母は聞いている。

沢山広げた枝と葉を風に揺られながら
毎年森の木々は繰り返してくれる。

 有り難いことだよなぁ。。。

                   はつ茸のひとつにゑくぼひとつづゝ  水国