新雪の急登を終えた山道は
長笹谷支流のヌル谷に添った
なだらかな道に入ってゆく。
◆ナロに入る
隆起による落盤帯に入った
ヌル谷が長年流した土砂が溜まり
この広い山中の平坦地を造った。
「休んで行くろう」
四国でこれほどの平坦地は他にない
正にここは奥物部の森のまほらだろう。
一本しようか。
◆懐に入る
カヤハゲは南西むかって
なだらかに山懐を広げていて
日当たりも良く多くの命が生きている。
「懐」とは温かく迎えてくれる処。
いつもヌル谷ナロから
雪は増えるが今日の雪質は軽い。
四国山地は太平洋から隆起し
瀬戸内側で中央構造線に削り落とされ
南の高知県側はなだらかで山の懐が深く
中国と四国山地を越えた軽く優しい雪が降る。
◆Mother tree
ヌル谷の出流処には
tochikoの森の母がいる。
35年この木の元にかよい
心まで交わしている様に感じる。
それこそ自然の命の絡合の様に思う。
樹齢300年と言われる老木が
大空を掴もうとするが如く広げた
幹と枝の一本一本には永い時の
風雪の記憶を刻んでいるのだろう。
◆かえり道
「来たで~!!」
「ドーン」って音が聞こえそうな
地吹雪が突然吹き下ろしてきて
ガッと身構えたら
ケロッと陽が射したりする。
遊ばれてるなぁ。。。
「綺麗やねぇ」
ここは叩きつける強風も
稜線が受けてくれるから
乗り越えた風や雪は楽しく
山麓は穏やかに過ごせる。
こんな森って
他にないよな。
「高知に生まれて
良かったね」
「冷やかったろう?」
雪も綺麗で面白かったで。
ここにも帰る木がある。
頂きまぁ~す (^_^)
ここからは母親となる冬木立 高澤晶子