猿板

遊山黒子衆SARUの記録

立夏の奥物部の森遊山 銀竜草

                                                   

 この山域に追われた鹿達のため
地を護る笹床を失った登り返しの道は
大雨の度土壌が流れてザレ場となった。

◆まほらに入る
 風が強いところには樅がいる。
脂が多い針葉樹は風にも寒さにも強く
この谷を護る樅の樹高は30mあるだろう。

足場が悪くなった
登り返しを終えた山道は
長笹谷支流ヌル谷に沿った
平坦な横道に入る。

◆ヌル谷ナロ
 高知県最大の原生林
奥物部の森のまほらの一つ
ヌル谷のナロに至る。

 この森のまほらは
落盤帯に流れ込んだヌル谷が
永い年月をかけて運び込んだ
土砂が堆積して出来た森の平坦地。

ここはお昼に引き返すとして
このままMothertreeに行こうや。

                             

◆変わること

 「銀竜草が生えちゅうで」

腐性植物は直接的には菌類に寄生し
間接的には樹木が作る有機物を
共生する菌経由で得て生きている。

いまこの森は人口増加に追われた
鹿が集まり大地を覆う笹や草を失い
沢山いたこの自然調和のバロメーターも
この森で見かけることは希になった。

 森の土壌は毎年積もっていて
日本の平均は1年0.11mmとされ
10年で1mm百年で約1cm積もった
この森は千年単位の土壌を失ったろう。

 「また流れたね」

百年でも千年でも地球にとっては
瞬きにも満たない時間だろうから。

                                                   

◆森の母

 「やっぱり
    勝負早いね」

 毎年どの高木よりも早く
葉を茂らせるtochikoの森の母。

この風景全てを若葉で覆わんとする
圧倒的な存在感を纏う栃の大木に
人の憂いなど及ばない力を感じる。

 この木は別格だよなぁ。

                しらしらと影を持たずに銀龍草  よみ人しらず