この森の中のもう一つの森。
ヌル谷のナロの伏流した渓水は
木洩れ日を流している様に見えた。
◆奥物部のまほら
「今年も茂ったね」
この深い山懐の平坦地には
鹿がここに集まるはるか前から
バイケイソウが群生している。
花芽を出したな。
ちょっと休んでいこうか。
◆源流へ溯る
「沢を登ろうや」
今日の目的は森の母に会うこと。
その樹はヌル谷が出流処に
数百年生きている橡の老木。
沢はかつて杣が使った山道。
山を削り敷いた登山道と違い
草刈りも道直しも要らない
自然に問うて見定める山の道。
また歳なりに
この道に帰ってみようかなぁ。
「もうそこや!」
大雨で沢が動いても
身体が地形を覚えている。
そんな感じがする。
◆Mother tree
「咲いちゅうで!」
栃の花を求めて集まった
熊蜂の低い羽音もそれを告げる。
「春蟬も鳴き出したね」
天高く枝を広げるこの樹一本で
どれだけの命を養っているのだろう。
今年の初蟬やぁ。。。
そんな森の母は地に落とした花で
今年も温かくtochikoを迎えてくれた。
有り難い ありがたい。
◆かえり道
人間は60兆の独立した細胞で出来て
失えば直ちに死ぬ腸内細菌やウイルスなど
他の生物100兆が体内で共生して生きてる。
それは助け合い調和している森と似ている。
近年の研究で大脳が全て支配する訳でなく
一つ一つの細胞の「あれが足りない」とか
「ここが傷んでいる」とか要求を整理しながら
食物を決めたり修復している事が解ってきた。
生命の都合は関係なく激動した地球環境で
そんな真の民主主義の様な個体が生き残った。
と考えると今の人間社会がどうなるか解るかな。
季節は寒暖押し合う初夏過ぎ
暑くないと物足りない夏本番に向かう。
騒動も一段落したし少し足を伸ばそうか。
新緑が綺麗やったで。
「そりゃぁ
気持ちよかったねぇ」
はい! 頂きます (^_^)
空の音空にて消ゆる栃の花 正木ゆう子