猿板

遊山黒子衆SARUの記録

初秋の奥物部の森遊山 緑の蔭

                                                               

 両側の山が迫った林道は
古の峠に上がる終点に近づき
渓から吹き上がる風が心地よい。

◆渓へ下る
 林道の果ては南北の山が迫る
東の稜線に向かう渓が始まる処。
日照時間が短いためだろうか
一面に苔が広がり生えている。

 終点手前の道標から
林道を別れ渓へ下る山道に入り
奥物部の森の懐へ分け入った。

                       

◆長笹谷
 上韮生川の支流長笹谷は
緑極まった木々のトンネルで
陰影の流れを見せてくれた。

 「渓も涼しいねぇ」

 渓筋は拓いた林道と同じく
山と川を結ぶ風の通り道となる。

 下に滝があるきよけやね。

                       

 山に吹き上がる風は
樹皮の更新を助けるだけでなく
鳥と同じく草木の種子を運ぶ
大切な役割も担ってくれる。

◆登り返す

 「シキミの実やね
   これはモミボックリ」

 植物それぞれは
適した処に根を下ろすもの。

                      

 この変わってしまった風景にも
わずかな調和への変化を感じるなぁ。

 「気持ちよく登ったぁ」

 長笹谷からの急斜面を登り終え
林道が横断する白髪山の森を見る。

 秋を感じる風やったな。

                             

 渓底から吹き上がる風に
木々が揺れる様に変化が見える。

 やっぱりここは別物だな。

◆まほらへ
 急登を終えた山道は
ヌル谷に添ってなだらかになる。
この道の先には僕らが40年かよう
奥物部の森のまほらの一つがある。

                 

ここは隆起で出来た落盤帯に
ヌル谷が永年かけて運んだ土砂が
堆積して出来た山中の平坦地。

 一休みしていくか。

                 どこまでも緑蔭づたひここに来ぬ  山口青邨