猿板

遊山黒子衆SARUの記録

中秋に入る三辻の遊山 蟬時雨

                                                                   

 「見て!
   珍しい三つ子」

 今年も栃は実りを迎え
沢山落としてくれるだろうな。

◆木の下のこと

 「このブナも
    大きいでねぇ」

 今年ブナの実は少ない様で
生き物は冬備えしっかしなきゃな。

 「団栗の殻と
    足跡がいっぱい!」

 栃の木の下は
多くの命が集まる処。

                                                                     

◆実りのこと
 木の実だけでなく
森は実りの時を迎える。
森の生物それぞれ好物が違い
植物で棲みわけるかもしれない。

 

 「リスは茸も食べるがね」

 他の食物も人には毒でも
食べられる生き物は沢山いる。

 奥物部でヒラタケ食べてたな。

                      

食物連鎖」でお互い助け合い
自らを犠牲にしても命を繫いで
地球気候変動を生き抜いたと思う。

◆森の中のもう一つの森
 山霧の杣道を歩いて
森の中のもう一つの森に入る。

 僕はここにも
先人の関わりがあったと思う。

                             

 山で生まれ生涯を山中で
終えたものが多いと言われる
暮らしは暗いイメージがあるが
陽気で逞しいとの記録が多くある。

欲しいものも余分なものもない
暮らしこそが本当の温かい人生。
多くの便利と物にお金を使う私達より
気楽で明るかったかもしれないな。

                       

◆かえり道

 「蝉を聞かんかったね」

 節気は仲秋に入った。
今年も蟬時雨が終わって
風は秋のものになった。

 遠野物語などの山の民の調査には
「酒が好きで陽気」との記録が多くあり
酒が筋肉を癒すことは医学で解っている。
 これは男性に強い傾向ではあるが。

                             

 僕は山のまほらを歩くときに
子供を膝で抱き陽気に猿酒などを吞む
山の民の姿が見える様な気がする。

 きっと幸せだったのだろうなぁ。

「霧が気持ちよかったね」

 森は蟬時雨が終わり
紅葉と雪の季節に向かう。

 第二の人生もそうありたいな。

                 やがて死ぬけしきは見えず蝉の声  芭蕉