「栃葉人参が赤くなった」
山中の陰地に自生するウコギ科の多年草。
夏に淡緑色の小五弁花を散形花序に多数開き
秋は赤い核果を結び根茎を解熱剤などとする。
◆滝頭のこと
山道は頂上付近より湧きだし
巨大な岩を削り落差20mを下る。
龍王の滝を成す大岩の滝頭に上がる。
「今日は静かやね」
水量が減って風景も落ち着いた
万緑の額に入る滝頭の釜は美しかった。
雨を告げているのか。
◆緑深まること
「今日もルリが付いてくる」
龍王の滝頭に上がった山道は
吉野川の支流佐賀山谷川に添って
大木が立ち並ぶ深い緑に分け入る。
「これはハツ?」
シロハツ?これはウスタケ(不食)。
菌類が目立つのは落葉期だが
雪の下で傘を広げるものもいる。
「こがねむしは 金持ちだ」
金蔵建てた 蔵建てた。
「こっちはヒキの子」
森は緑深まり生命力に溢れる。
◆静寂に浸ること
かつて森で心が鎮まるのは
木の中心部から出るクレゾール系の
化合物だろうと長く言われてきた。
「蟬時雨が気持ちいい」
しかし最近の研究では「音」。
せせらぎや葉が擦れる高周波が
(人間の耳では聞こえない音だが)
心理に影響することが解ってきた。
また街などは四角いものばかりだが
自然の風景に「四角い」造形はなく
山の「三角」や沢の「曲線」の造形で
そんな自然風景で心が鎮まると言われる。
◆信仰の域へ
山道は石門の様に並ぶ
大きな岩の間を通り抜けて
先人らの信仰の域に分け入る。
程なく山に還ろうとする
古い石段を真っ直ぐ登り始め
深山の寺の広い境内に上がる。
神の域に続く石段の先
囀り響く深い緑の中から
定福寺奥の院が現れる。
「休んでいくろう」
万緑や木の香失せたる仏たち 伊藤通明