猿板

遊山黒子衆SARUの記録

初夏の加持ヶ峰遊山 とんぼ

                                         

「見て!とんぼ」

滝の側でジッと動かない。

  「羽化したばかりやおか?」

    ここもヤゴがおるがやね。

◆大岩の天辺

 「休んで行くろう」

 急な岩盤を登る山道は
真名井の大岩の頭にある
昭和の頃の東屋に上がる。

 これも見納めやな。

咲いて日が経ち色褪せた
岩場などに追いやられた
石楠花らが迎えてくれた。

                                         

◆まほらに入る
 東屋で一休みしたのち
僕らが梶ヶ森のまほらと感じる
先人が崇めた原生の森に下った。

 この紅葉谷と名付けられた
渓谷が佐賀山谷川の源流となる。

           

 大雨のあと増水しても濁らず
日照が続いても涸れることなく
いつも澄んだ水が湧き出て山麓に下る。

 これこそ神の恵みなんだろうな。

 生物は調和の取れた環境が
気持ちよく感じ穏やかになる。
ここは真に秀でたところ「まほら」
他にない森の中のもう一つの森だろう。

◆かえり道

 さあ 帰ろうか。

 森が調和するためには捕食など
辛いこと、悲しいことも多くあるが
無くすことは出来なかったのだろう。

 生物は炭素の循環で種を繋ぎ
個が死なないと群は劣化するだけ。
結果として絶滅するしかないので
「死」の更新が必要だったのだろう。

                       

 「鳥の目線」

 今日その時が来るとしても
鳥たちは楽しげに囀っている。

 昨日は晴れ 今日も朝だな。

◆遊山終わり
 35年前山道を毎週末歩き始めて
森に生きる命や色んな人と出会い
多くの気づきや学びを頂いてきた。

 自然の風景は通う毎の一期一会
人生の出会いと別れも同じ様なもの。
「向こうから来るものは受け入れるしかない」
それが自然に思えるようになりたいと思う。

                             

 「今日も気持ちよかったね」

どんな天気でも空をじっと見つめて
見定めた山道を後悔したことはない。

     有り難いことだね。

             蜻蛉生れ水草水になびきけり  久保田万太郎