斜面が切れ落ちているため
いつも涼しい風が吹き上がる
真名井の大岩の天辺にある東屋。
休んでいこうか。
◆大岩の上
急登で掻いた汗も引き
まほらに向かって下る山道は
囀りと沢の音に包まれていた。
「景勝めぐり」と書かれた
昭和と思われる道標がまほらに導く。
何か温かさを感じる文字だなぁ。
◆紅葉(こうよう)谷
真名井の大岩が堰き止めた
この自然林に覆われたまほらは
佐賀山谷川が湧き出す源流域で
いつも澄んだ水に満たされている。
独立峰梶ヶ森は四方に長く山麓を持ち
気圧差で吹き上がる風が山頂付近でぶつかりあい
雲を生み雨となって山に生きる命や山麓の里人も養う。
日本書紀にも記される
「真名井」とは神聖な井戸のこと。
古来日本人は清水湧き出すところを
神聖な場所として大切に祀ってきた。
◆稜に上がる
苔むした紅葉谷の渓辺を歩き
大岩から稜に上がる階段を登る。
「青空も見えゆうね」
大岩の天辺に上がり
青々とした山頂付近の森を見る。
午後は不安定かもしれないな。
大岩から稜線に乗った山道は
笹床と生きるブナなどの自然林を歩き
この日はルリが寄り添うように囀っていた。
さあ 帰ろうかね。
◆かえり道
「こんまいくせに
怒ってちゅうで」
寄らば切るぞ!ってことかな(笑)
今年は記録的に早い梅雨明けが続いている。
例えば江戸の三大飢饉は概ね50年毎にあり
原因は冷害や長雨、ひでり、虫害など自然現象で
これも海洋の影響が大きい日本の宿命とも言える。
今年も思想で異常気象と言うかもしれないが
過去から続く今を科学的に考え検証しないと
子孫の将来を見誤ることになるように思う。
「雨にも遭わず気持ちよかったね」
真清水の音のあはれを汲みて去る 黒田杏子