標高約1400mの山頂部は
北から流れ込む雲の中にあり
前線が遠ざかっていることを知る。
◆分け入る
「爽やかな風」
登り口の気温は20℃と
この時期としては低いと言える。
いいコンディションだなぁ。
「遂に現れた!」
種類が多いアブ科の昆虫の総称
二枚の羽と大きな頭に美しい光沢の複眼を持つ。
うなりを発し飛び牛虻は人や牛馬に付いて血を吸う。
君たちの住処やものねぇ。
◆杉林
登り始めは人工林。
深く渓へ切れ落ちた地形を
風が吹き上がり気持ちがいい。
午後は不安定かな。
夏も終わりに向かい
夏の花は実を結びはじめ
秋の花が蕾を出していた。
これもはっきりした四季がある
温帯の島国日本だけの変化の風景。
◆自然林に入る
「ニイニイゼミが鳴きだした」
山はハルゼミから始まった蟬の順番も
7月半ば過ぎてニイニイゼミが羽化して
街ではクマゼミが夏の盛りを告げている。
山道は杉林から自然林に入り
この山らしい岩の急登にはいる。
私は通うことで山の地形を覚え
地層や渓の流れも参考にしている。
山道は大岩が成す登りを終え
涼風を産む深山の滝に下る。
◆龍王の滝
落ちる水に勢いがあるため
落差のある滝は大きな釜を作り
木々の天井にぽっかり穴を開ける。
大岩を下る落差20mの深山の滝。
南向いた土佐には多くの滝があるが
私はこの滝がもっとも美しいと思う。
「ウワバミソウも咲いちゅう」
高く広がる飛沫は植生を育て
今年も水辺を好む草が花を咲かす。
日本は世界に類を見ない
豊かな自然を持つ奇跡の島国だと思う。
夏山を洗ひ上げたる雨上る 今井つる女