新暦六月五日ごろにあたる。
禾(のぎ)のある穀物を播く時期の意から。
このころから田植えが始まり梅雨めいてくる。
◆静かなこと
登り口の気温は17℃。
多少寒気の影響もある様で
風が涼しく快適に歩けそうだ。
「暗うなったね」
林道の木々の葉色が濃くなり
今日はサングラスは要らないな。
「これはキブシの実」
山地に生ずるキブシ科の落葉小高木。
春に葉に先立ち多数の黄色花を穂状に垂らす。
果実を粉とし付子の代用として黒色染料とする。
30年前の林道は木々が若く
夏になると暑くてたまらなかったが
毎年伸びて今は緑のトンネルになった。
それに人間も役立ってると思うな。
「もうすぐ
西熊山も見えんなる」
30年なんて森から観れば
瞬きぐらいの時なんだろう。
◆花のこと
「卯の花が匂いはじめた」
空木はユキノシタ科の落葉低木。
山野に自生し五月ごろ小花を咲かす。
旧暦四月の「卯月」はこの花からきたという。
昆虫も生きているから。
春と夏の花の合間は空木が担う。
清楚な花は地味だけど私は好きだな。
「ウワバミソウ咲いた」
陰湿地に群生するイラクサ科の多年草。
柔らかく多汁で葉には切れ込みがある。
6月頃小花を葉腋に密生。若い茎葉は美味。
“群れ咲いて二人静と云ふは嘘”って
俳句に詠われたのは本当だよなぁ。
◆林道のこと
植物群落が遷移を経て達した極相林は
群落全体で植物の種類や構造が安定して
大きく変化しないから植生は単調で少ない。
なので林道建設や伐採や山火事など
一旦自然を排すれば他の命の生き処となり
命(種)の競争が始まり種は強くなるから
植生が豊かになる不自然も必要なことだろう。
生物多様を言うのなら人の活動も必要で
目の前の現象をみて感情的にならずに
過去から学びこれからを科学で見定める。
それも大切な事だろうと思っている。
谷ゆけば硫黄こぼるる花卯木 秋元不死男