猿板

遊山黒子衆SARUの記録

夏へ移ろう三辻遊山 つつじ

                             

 「これが土佐水木ですか」

「そうやけど
   花は終わっちゅね」

スプリング・エフェメラルだからな。

◆腰を下ろす
 自然休養林広場として整備された
杖塚にあがり春の陽射しの中に出る。
空には高層の巻雲が長く尾を引いて
寒気が押している事を告げていた。

 「オンツツジはこれからやね」

 近畿地方南部、四国及び九州に分布する。
日当たりのよい低山の岩場や海辺の林縁に自生し
春から初夏にかけて山躑躅に似た紅色の花を咲かせる。

                             

◆赤良木峠
 杖塚から来た道を少し引き返し
峠に下る古の杣の道に入る。
かつて峠道は城下まで続いていた。

 昔茶屋もあった赤良木峠に降り
春の嵐一過の澄み切った空の下に出る。
昭和にドロマイト採掘で開かれた峠が
緑に覆われる様子をどこまで追えるかな。

 「あれが石鎚山で」

     「意外と近いですね」

 そりゃあ
まっすぐ行ければねぇ。。(苦笑)

◆近道に入る
 峠から植林の作業道に入る。
この道は三辻山への近道となり
峠の食堂のご主人からも聞いた道。

                             

 三辻山の北面にあるこの林も
陽が高くなり木洩れ日が射し始めた。

 「森の花時計」

その僅かな陽射しで生きる草たちが
今年も清楚な花を咲かせ迎えてくれた。

                            

殆ど人目に触れることがない
この薄暗い植林の乏しい土壌に
根を張って毎年花を咲かせる。

 ほんと植物は強いと思うよ。

 

◆稜に乗る

 「笹が出たで」

急な登りの近道が明るくなり
なだらかになれば稜線は近い。

 まだ若い雑木の稜の道に乗る。

 「空気が変わった」

                             

 「山頂行くろう」

忘れられた昭和の園地に降りる。

 今日は気持ちよさそうだ。

                 満山のつぼみのままのつつじかな  阿波野青畝