さあ 着いたな。
カヤハゲの中腹南斜面
谷と谷が迫った清水出流処に
私達が通うまほらの一つがある。
◆まほらに入る
「まほろば」「まほら」は
マホ(真秀)に漠然と場所を
示す意の接尾語ラの付いたもの。
すぐれたよい所を示す万葉ことば。
そこに至る山道は急峻な斜面にあり
ここも他の山域同様に土壌が洗われて
所々通行が危険な箇所が増えてきた。
また土が乗ったなぁ。
◆ケヤキザコ
さあ テント張って準備するか。
この森の平坦地が今回の遊山の場。
炭窯跡や茶碗、徳利などの陶器が
今も残るかつて杣も寝泊まりした処。
四国山地の南に位置する土佐は
雨に恵まれた山岳地帯が多く良材を産し
山地の層も厚かったため漂泊民と言われた
木地師が長く滞在する里が点在していた。
この山域には昭和の頃まで
炭焼や木地師が暮らしていたと
里の老人から聞いたことがある。
よっし! やるか!!
◆火を熾す
水汲み、薪集め、火熾しは
テント泊では楽しい仕事だけど
昔の人は大変だったろうと思う。
準備が整ったら調理にかかる。
道具や食材は分け合って荷揚げた。
やはり生き物は群れたほうが楽だよな。
さて 日が暮れる前に
薪集めて焚火を組み直そうか。
◆炎と遊ぶ
蒼い夜の帳が降りてくる。
この色合いも水蒸気が多い
日本独特の風景だと聞いた。
ガソリンランタンを灯す。
LEDもシャープでいいけど
私は炎の色合いが好きだな。
それは焚火の様な
安心感を覚えるから。
あれやこれやと
時を忘れお喋りしてる間に
満天の星が輝いていた。
そろそろ寝ようかね。
テントに入って表を見たら
森の上から月が覗いていた。
この色合いもいいよなぁ。
しみじみと立ちて見にけりけふの月 鬼貫