猿板

遊山黒子衆SARUの記録

十三夜の奥物部遊山 月夜茸

                       

 「上手に染まっちゅうで」

 黄金色と称されるブナの黄葉。
しかし私の経験で四国のブナたちが
上手く染まる姿に会うことは希だった。

◆秋の色合い
そんな四国は植物も動物も
本州のものより小型になって
ブナなども葉も小さく樹形も違い
独特の性質を持つものは少なくない。

四国はそれら狭い島で生き残った
変わり者の宝庫なのかもしれないな。

                                         

◆秋の木霊

 いたいた!!

この山域も笹床を失ってから
動植物がめっきり減ってしまったが
菌類は細々でも傘を広げてくれた。

「鳥が飛んできて
   風が吹きよりゃ大丈夫よ」

 子供の頃から山を追っていた
杣人が教えてくれた事を思い出した。

                            

◆谷の奥へ
 三嶺への登山道を別れ
古の木地師の道に分け入った。

 「水は大丈夫やね」

 ザレ場となった沢を幾つか横切り
奥物部の森のまほらの一つに着いた。
ここも奥物部の森の私達の居場所の一つ。

この森の平坦地が呼ばれた「サコ」とは
山と山との間で谷のせばまったところ。
谷の行きづまり「狭所(せこ)」の意で
昭和以前から知られていたと杣に聞いた。

「お月さん見えるろうか」

高木の落葉はまだ先の様だが
テン場の南東が開いている。

 晴れたら10時頃かな。

                 

 荷を解いたら乾杯や。

 

◆火を囲む
 一晩分の薪を集め火を熾す。
樹々は成長と共に要らない枝葉は枯らし
地に落とし微生物を養い炭素は循環し
それを燃やせばCO2が他の植物も養う。

                             

熾火がしっかりしたら食事の準備。
地元のものと山の恵みを頂くこと。

 

森に懐かれ仲間と自然と語らい
時も楽しみゆっくりと過ごすこと。

                                     


 きっと先人もそうやって
互いに助け合い生きて来たんだろうな。

                  ひととせは夢のまにまに月夜茸  佐々木 咲