猿板

遊山黒子衆SARUの記録

芒種の四国カルスト遊山 樹々の香

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 天狗ノ森を後にして
私達がこの森のまほらと思う
姫鶴平のケヤキ平へ向かった。

 もう姫蛍が舞いゆうろうかね。

◆時を溯る
 平地を持たない地域先人の炭焼きや
なだらかな場所を切り拓いた焼畑農業により
度々発生した野火がカルスト台地の基を造り
その火を免れた本来の姿の森にまほらはある。

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鞍部にある姫鶴平から北側に回り込む。
かつてここにあった湿地が野火を止め
原生の森を守ったとも言われている。

 「石鎚山が見えたね」

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◆森と言う生き物
 ケヤキ平の登り口に車を置き
五段城北面の広葉樹林に分け入った。
ここの森はほぼ極相に達しており
無数の命が調和を保ち森を成している。

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例えば植物の後に発生した菌糸類は
土の掃除を行い森を育てる能力があり
また学習していると思われている。

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ブナが倒れ空いたところに菌類が楓と樅を育て
その土に窒素が不足していると毒茸が発生し
虫など生き物を殺し死骸を窒素肥料の元にする。

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やがて楓や樅が育った柔らかい日陰でブナが芽吹き
この若木がぐんぐん大きく育った日陰で楓と樅が枯れる。
そのブナ達が何らかの手段で連絡し合い裏表年を決め
種子は森に生きる動物の数を花は虫の数調整する。

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その森に棲み始めた狼や狐などが
病気にかかったものを見定め捕食し
森の生き物の健康と調和を保っている。
その仕組みは人間の身体とも似ている。

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◆樹々の役割
 キリンの好物アカシアはキリンが増えてくると
半径500mに広がる揮発性物質を放出し
他のアカシアの木々も苦味成分タンニンを分泌し
キリンは渋味に吐き出し遠い場所へと移動する。

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だがアカシアのこの防御システムは
キリンにとっても将来的に良いことで
このシステムがなければその場所の
アカシアを食べ尽く枯渇させてしまう。

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そのシステムは草と虫などの間にもあり
植物はどこかで見て考え学習している。
それが人の五感では感じることが出来ないから
自然現象の5%しか解っていないと言われる。

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                   万緑や木の香失せたる仏たち  伊藤通明