工石山から峠に下る山道に入る。
この道は古の本山郷と城下を結ぶ峠道で
幾つかの峠を繋ぎ茶屋もあったと聞いた。
◆赤良木峠
標高約950mの赤良木峠に出る。
かつて峠にはドロマイト鉱山があり
南北に視野が開け北から迫る雲が見えた。
「寒々しい雲やね」
寒気は石鎚山系にぶつかり
雲となり南東向けて流れている。
これなら昼までは大丈夫やな。
◆赤良木園地
峠から三辻山への近道は
杉林を葛籠折れに標高を上げる。
程なく近道は三辻山の山道に交わり
山頂直下の忘れられた昭和の園地に至る。
「山桜まだやねぇ・・・」
北斜面にあるにしても
ちょっと遅すぎじゃなかろうか。
まあ
次の楽しみと言うことで。
◆もう一つの森
まだ芽吹かない高木の下で
低木の若葉が蝶の様に森を舞う若い森。
「風が気持ちええですわ」
「花筵になった」
ここの躑躅は見納めのようだ。
若葉色に深く分け入り
森の中のもう一つの森に入る。
「だいぶん陰ってきたね」
稜線谷筋の窪地にある
森の中のもう一つの森も
これから深い緑に沈んでゆく。
◆かえり道
山道は南斜面に巻き
古の峠道に帰り登り口へ下る。
「この時分が
いちばん好きですわ」
空気も風も変わるよね。
「ハナイカダが蕾をつけたで」
山地に自生するミズキ科の落葉低木。
葉の上面の中央に淡緑色の小花をつけ
これを花を乗せた筏に見立てる。
降りはじめた霧雨と
アケビの花に見送られ
私達は次の山域に向かった。
「今日は
賑やかで良かったね」
勿論お昼は馴染みの食堂で。
いただきます。
花あけび垂れて青嶺を傾かす 松本進