山腹の森に入り
登り始めの雨は次第に止み
山道は霧に覆われてきた。
高山は層雲を留めることがある。
◆森を抜ける
剣山の広大なブナを護る
風に強い樅の住み処を過ぎ
山道はいったん神の森を抜け
なだらかな山頂を覆う笹原に出る。
この天気のせいだろう
西島リフト駅は静かだった。
◆尾根に上がる
リフト駅の方との挨拶の後
先を急ぐため直登ルートを取った。
南から吹き込む台風の風は
山に衝突し稜線で複雑な動きをする。
そんな厳しい条件でも
草木は大地にしっかり根を張り
今年も咲かせた花を揺らしていた。
ホントお前たちは強いよ。
◆雲に入る
山にせき止められ
水滴となった海の水蒸気は
深い霧となり稜線を覆い
山の命を養ってくれる。
やがて霧は沢から下り
川に集まり海に還る。
台風は時に命を奪うが
命のために無くてはならない
有り難い自然現象だと思う。
霧の道現れ来るを行くばかり 松本たかし