森の最前線樅帯を抜け
雲一つない冬青空に入った。
吹き上がる風はこの時期として
そよ風と言っていいものだった。
◆空に出る
南には大海に下る山並に
等圧線の蛇行による収束帯が
生む雲が穏やかに流れている。
一本しょうか。
「石立が格好いい」
◆南の前衛峰
剣山より発する剣山地の
主稜線から南に突き出た白髪山は
四国山地南の最前線に位置する。
山腹の笹原を西に向かえば
山並の彼方に土佐湾が輝き
東を見れば主稜線が剣山へ続く。
この遮るものないこの眺望も
白髪山の魅力の一つと言える。
◆稜線に乗る
山頂部を葛籠折れに登る山道は
次第に勾配がなだらかになりはじめ
登り口から1時間足らずで主稜線に立つ。
「頂上行くろう」
三嶺や剣山への縦走路となる
分岐を西に取れば白髪山山頂で
この手軽さも魅力の一つだろう。
◆頂に立つ
標高1770m白髪山頂は
目の前に奥物部の森の主峰
三嶺がどっしり座り迎える。
遙か北西方向には
石鎚山地の高峰を望む。
「やっぱり
笹ヶ峰は別格やね」
確かに石鎚より白いね。
眼下には私達が辿り着き
30年通い続ける奥物部の森。
こんな懐深い山域は
他にないだろうなぁ。
雪山のかへす光に鳥けもの 木村蕪城