落雷じゃないようだな。
高木が倒れて空が開く。
森でたまに見かける風景だ。
◆樹々を観る
森の空を覆っていた
大木が倒れると陽が射し
木陰で守られ成長していた
ぐんぐん幼木達が伸びはじめる。
この様な風景の変化や
特徴的な姿をした樹々には
山道が雪に埋まったときに
幾度助けられたことだろう。
◆山を観る
広葉樹が蓄えた水は命を養い
この急峻な山腹を横断する山道は
幾つかの沢があり水に不自由しない。
過酷と言われる道であっても
きちんと理解すれば助けとなり
通い続け見定める事が大切だと思う。
ここらで終わりにするか。
この山道の一つの道しるべ
面河尾根の稜に上がって
来た道を引き返した。
◆口福時
この尾根で地下水が湧く
数少ない平坦地でお昼にした。
今日も料理長はワイズさんだ。
私達の目的は積雪期テント泊で
今回の遊山はその課程であって
今日急いで無理して登らずに
一歩一歩確かめ今年の道を見定める。
決して先を慌てないこと。
それが冬山登山だと思っている。
◆かえり道
1950年まで平均寿命50歳未満の
日本人は今100歳まで届こうとして
人生が2回与えられたとも言える。
そして私は2回目の人生の準備をしている。
今まで山も街も出会いと別れを繰り返し
いま準備をしている私の第2の人生は
体力や山力ではなく価値観の歩幅が合う
仲間と歩いて行きたいと思っている。
さあ この日から
白い稜線への山道が始まった。
しっかり踏み固めて行こうな。
おのが突く杖音に涼新たなり 村越化石