山登りをはじめてしばらく後の事。
周りの植物や風景をゆっくりと楽しめるようになった頃、
森を率いるような、大きな栃の木に出逢いました。
枝を四方に広げ、堂々とした風格を持ち、
大地をしっかりと掴むように立っています。
ここ物部の森には、
栃を多く見かけます。
「大栃」という地名もあるくらいですから、
昔から多かったのでしょうか・・・。
厳しい冬を越冬芽で越し、
春には枝から大きな葉を7〜9枚広げます。
梅雨時期には森のシャンデリアと呼ばれるほど
多くの花を付け蜂を養い、
秋には先週ご紹介したようなドングリを
これまた沢山落とし、猪や鹿たちを養います。
昔から、人間の生活にも深く関わってきた木で、
軽くて、狂いが少なく加工しやすい材は
木地師の手によって
こね鉢や食器が作られてきています。
また、ドングリは
気の遠くなるほどの灰汁抜きの過程を経て
お餅などに加工されてきました。
水田の出来ない急峻な山の生活の中では
貴重な蛋白源であり、その他の栄養源でもあったようです。
愛おしいこの実を先人に習い、
なんとか餅にしようとしましたが、
煮すぎて薄皮がうまく剥けなかったり、
水に浸けていて腐ってしまったり・・・。
何度も失敗してしまいました。
その後、いろんな方の協力を得て
どうにかお餅が仕上がった時の嬉しさは
忘れられません。
どこにいっても、
どの山でも
気になる栃の木です。
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