今日 三辻山を選んだ理由は
登り口までの台風の影響を考えて
主要道路から近い山であること。
「林道も心配やしね」
◆赤良木園地
稜線から緩やか下った山道は
昭和の頃の忘れられた園地に至る。
いつも一本する静かな処も
今日は強く風の音が響いていた。
◆三辻の森
古の杣道が敷かれた森は
自然に生えたブナと樫が並ぶ
暖温帯と冷温帯樹木が混生する
日本でも珍しい植生が生きている。
「また葉っぱが透いたね」
季節変わりもあるけれども
台風は木々の枝葉を剪定して
大地に恵みを降ろしてくれる。
「朴は大きい葉を落とすき
よけい森が開くね」
森から見上げると解るけど
樹々は葉が重ならないように葉を広げる。
森には動けないものも沢山いるが
自然は全てのものに等しく恵みを与える。
◆森の中のもう一つの森
「凄い風!
大きい雲が流れゆう!!」
山道は稜線の鞍部に近づき
南に視野が開けた伐採跡に出る。
「気持ちいいねぇ~♪」
今日は雨も降らず吸血虫も居ないし
ここまで汗の一滴も流れることはなかった。
風だけ台風ってのもいいもんだ (^_^)
「風の音しか聞こえんし!」
この森のまほらと感じる稜線の鞍部は
収束した風が強く吹き上がっていた。
こんな体験はそうは出来んと思うよ。
今回は経験で判断し得た千載一遇の変化の時。
利己の希望ではなく頭を垂れて山に分け入れば
台風も水と風で森を浄化する自然現象だと解る。
「さて 今日もおしまい」
◆かえり道
この星に誕生した生物は
最初の単細胞から多細胞となっても
「死」は種の絶滅することだったが
両性生殖となって死ぬことが出来る様になった。
そんな自然は恵みも与えてくれるが
時に犠牲を求めることもあるけれども
種の進化のためには古い命の死が前提で
人が恐れる「死」も必要な自然現象だろう。
動物には「生きる」か「寝る」かしかないが
大脳が大きくなった人間だけに「死の恐怖」が生まれた。
動物の「死」は「寝る」の一部であって「恐怖」ではない。
僕ら人間の「登山」は生きるため以外は
単なる「お遊び」でしかないのだろう。
「森の命は喜んじゅうでね
ゴジラの上陸じゃないもねぇ」
「まさか山に登っちょった!!」
「凄い風が気持ちよかったでぇ」
「そりゃあ 良かったわ」
今日も有り難く頂きます (^_^)
一樹にこもる雀台風去りし後 加藤憲曠