「この風景は変わらんね」
高山湿地に群生するユリ科の大形多年草。
初夏に6弁緑白の小花を円錐花序につける。
肥大した根茎に劇毒があり殺虫用に用いた。
◆ヌル谷のナロ
この森に鹿が逃げ込む前から
ここはバイケイソウの生息地で
今もこの地に春の訪れ告げて
この森のまほらを護っている。
「鹿が啼いた」
この騒動は今年も続くろうねぇ。
「補助金もらえる網巻きにね」
◆沢を登る
今日は沢を登ろうや。
ミソサザイの賑やかな囀り。
「恋の季節やも」
かつて杣は木々が少ない
谷筋を登って山深く分け入った。
沢登りこそ日本の登山の原点で
生き物に会う機会も多い処。
芽が膨らみだしたな。
そのヌル谷が湧き出す源流点に
tochikoの森の母は根を張っている。
「毎年勝負が早いきね」
◆大きな木の下で
「ここでお昼にしょうや」
源流の水を湧かして作ろうか。
「あんたぁ~
久しぶりやね!」
去年は林道で会ったよな。
ムジナ(穴熊)もご飯を探しゆろう。
◆かえり道
何十億年も繋がってきた自然は
それぞれ何かの手段で繋がっていて
大脳支配になって自然から離れた人間は
解らなくなった事が多いように感じている。
それを探そうと思わないけれど
ドキドキしながら山懐に入ることが
楽しくて幸せなんだろうと思っている。
「この桜はまだやね」
「自慢」を背負い命をかけて
登る価値のある山があるのだろうか。
「美しいもの」はと問われたら
僕は迷わず「自然」と答える。
「この前吹雪に咲いてたね」
この桜は迎える桜でなく
送る桜やったんやなぁ。
山清水いくらでも湧き手に掬ふ 島崎勇作