フワフワ小雪舞い降りる
静かな登り口には下の渓から
穏やかな風が吹き上がっていた。
◆登り口のこと
「春の雪やね」
標高約980mの登り口
気温-2℃は平年以下だが
軽い冬装備でいい感じだろう。
さあ 行こうか。
残雪がない5cm前後の新雪は
冬靴ならソールエッジが効くので
滑り止めなく歩く事が出来そうだ。
◆林道のこと
山道は昭和の頃敷かれた
古の峠に続く林道から始まる。
僕らはその始めから40年間
四季に目を向け歩いてきた。
「若い頃始めて良かったね」
裏山からチベットまで重荷を背負い
高い頂を目指す山道を経たからこそ
山懐の深さが見えはじめた気がする。
今のかよう山道まで
ながい坂を登ってきたんやな。
◆渓のこと
山歩きで最も危険な箇所は谷筋。
水が刻んだ谷は風や雪が集まる地形で
今回の大山の雪崩遭難も沢が密集する
漏斗(ろうと)状の地形で発生している。
この林道も幾つかの渓筋を横断し
過去何度も土砂崩れを起こしていて
林道だから谷筋の見極めは容易いが
登山道では難しく積雪があれば尚更だ。
そんな谷筋での救助活動も危険は同じで
難航するだけでなく二次遭難も少なくない。
多くの山は立ち入る期間や区域に規制はないが
ひとたび遭難が起きれば自己責任では済まない。
◆装備のこと
“登山と言えばダブルストック”
“雪と言えばスパッツとアイゼン”
日本人の真面目が故だと思うが僕も
その様な方の遭難救助を何度か行った。
ダブルストックは両手が制限される。
スパッツとアイゼンは引っ掛けがある。
山歩きの根本的なこともあるけど
その日の山道や積雪を見定め道具を選ぶ。
「10年ここか丸山荘やったね」
毎週末山にかよい見えた
変化の気付きは学びとなった。
この森も僕らの師匠やな。
見て居れば小雪の中の玉霰 高木晴子