猿板

遊山黒子衆SARUの記録

立春の三辻山遊山 春雲

                       

 「気持ちいい雲やね」

 立春は暦の上で一年の始め
春の始めとされ暖かくなりはじめる。

    春の雲になってきたなぁ。

◆登り口のこと

 「がらがら」

 今日も静かな登り口。
気温は5度で平年並みかな。

 汗掻かず歩けそうやな。

 今日は手袋忘れたけど
この気温なら大丈夫だろう。

 さて行くかな。

                                                       

◆林道のこと
 古の坑口に上がる林道から
三辻山への山道ははじまる。

 「何かのスミレ?
       若葉やね」

 地熱は安定した暖かさ。
雪解けは表面だけでなく
雪層の底からも始まって
雪崩を誘発する事もある。

                     

 春は地面の草たちから始まり
これらも目立たなくても立派な
スプリング・エフェメラルだろう。

◆植林のこと
 林道を別れた山道は
この山域の主峰工石山に至る
人が植えた杉檜の林に入る。

 僕はこの歳になって
植林も気持ちよく感じ始めた。
それは人と共生する木の心
そして木と共生する潅木の心。

                      

その自然の命の絡合を知って
山で感じ始めたからだろうと思う。

◆二次林のこと
 山道は薄暗い植林を抜け
人が公園整備したのち鳥や風が
運んだ種が根を張る二次林に入り
落葉した林は早春空の下に出る。

                                           

 「ガラの群が来た!」

 ここで冬を越すコガラ達だろう。
姿の見えない鳥たちはどこから飛び立ち
どこに還るのだろうなどと思う歳になった。

 「杖塚上がるろう?」

 澄んだ空気も乾いた風も
今日は気持ちいいからなぁ。

                  春の雲人に行方を聴くごとし  飯田龍太