修験場であった事を伝える
鎖場に架けられた階段を登り
真名井の滝頭に上がった。
◆修験場のこと
「また雪が降るね」
滝頭の二段の滝が見せる
四季の風景も楽しみにしている。
どんな風景に出会えるだろう。
◆滝頭のこと
いつも休憩する真名井の大岩の
岩頭の東屋には四季折々の風が吹くが
冬に入ったこの日の風は寒く感じた。
「一枚羽織ろうや」
「雨上がりみたいやね」
雲の切れ間から射す陽射しで
樹々の枝が纏う雫が輝きはじめた。
今朝まで降ってたみたいやな。
◆森の中のもう一つの森
東屋で珈琲で一息つけたのち
真名井の大岩が堰き止めた土砂が
堆積して出来たまほらに下った。
「秋は終わったね」
まほらの樹々は潔く
染まった葉を落としていた。
これが晩秋の佇まいだろうな。
「花を咲かせた草も
実を結んだ樹々も枯れて
一年の営みを終えた幹や枝は裸になり
ひっそりとながい冬の眠りにはいろうとしている。
自然の移り変りのなかでも
晩秋という季節のしずかな美しさはかくべつだなぁ」
= 山本周五郎 「晩秋」=
さあ 帰ろうか。
◆かえり道
不安定な太陽活動に応じて
変化してきて生き延びた自然は
変わらないと生き残れなかった。
この自然の森を成すにも
人の寿命を遙かに超えた
永い年月を経て出来たものを
人の知恵で守れるのだろうか。
そんな人も自然の一部。
ただ頭を垂れるしかない。
僕はその様に感じている。
枯れもいい佇まいだよな。
「いい遊山やったね」
今日は晩秋から
冬木立まで歩けたな。
さて ウチに帰ろうか。
大空に伸び傾ける冬木かな 高浜虚子