猿板

遊山黒子衆SARUの記録

Tommyさんの春休み まほら

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 長笹谷からカヤハゲに登り返す。
昨夜は白髪山麓で泊まったお陰で
朝の清々しい空気を得ることが出来た。

◆カヤハゲに入る
 朝の斜陽に浮かぶ樹々の向こうに
歩いてきた白髪山の森と林道が見える。
これもこの時だけの一期一会だろう。

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登り返しの急登を終え
ヌル谷に入り30年通う
私達の居場所に帰る。

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◆Mother tree

 今日は大栃に逢いに行こう。

この森の平坦地を造ったヌル谷の
源流に根を張る栃の老木がある。

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 「今年は早いね」

深山にいるtochikoの森の母は
天に向かい広げた無数の枝先に
今年も若葉を芽吹かせていた。

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老木にもたれて大地に座ると
言葉では表現できない安心感を覚える。

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これも私達人間が自然と
絡合している証だろうと思う。

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◆ヌル谷のナロ
 ナロに帰り鳥の囀りに耳を傾ける。
ここは盆地状で囀りもよく反響し
冬に聞けない囀りも加わっていた。

 「渡りが帰って来たがやね」

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「山が裸になっても
  鳥が種を運ぶき何ちゃあ心配ない」

いつか聞いた杣の話を思い出した。

 鹿も人間も鳥には勝てんがやね。

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この老木から観れば短い時間だろうが
あの楽園の様な奥物部の森の風景を
私達の世代でもう一度見ることが出来るかな。

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◆かえり道
 さあ そろそろ
街に帰ってお昼にするか。

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 今回私達は荒天を小屋で避け
二つの山を訪れる計画を立てた。

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しかし連休中荒天を強いて入山した
何人かの尊い命が散ってしまった。
私も幾度か遭難し死を意識した恐怖や
後悔がどれだけのものか想像が出来る。

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ただ予測できない死は誰でも訪れるから
命と引き換えに残して下さった大切なことを
心に刻んでこれからも山に向かいたいと思う。

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 天の頂に登られた志同じくする
御霊の平安を魂からお祈り申し上げます。

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 さて Tommyさん
おっかなびっくりドキドキしながら
次はどこに行こうかねぇ。

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                   春北風白嶽の陽を吹きゆがむ  飯田蛇笏