猿板

遊山黒子衆SARUの記録

秋分の三辻遊山 秋の雲

                             

 2019年12月に始まった騒動で
行動範囲が制限されはじめてから
私達の最も身近にあった三辻山に
気付いたことは不幸中の幸いだった。

◆杖塚のこと

 「涼しくなったねぇ」

昭和42年広場整備された杖塚には
タイムカプセルがあり当時の子供達は
未来にどんな夢を描いていただろう。

 真澄の空にのんびり流れる
秋の雲が気持ちよさそうだった。

 天高くなってきたな。

                       

◆峠道のこと
 杖塚から来た道を少し引き返し
かつて杣達が使っていた峠道に入る。

 「あんたぁ!
   しがみついてどうしたが?」

                 

台風の雨粒は1cm位の身体で観れば巨大だし
山に吹き上がる風は街とは比べものにならない。
その絶え間なく森を叩きつける風雨をこの蛙の子は
どこでどんな想いで見上げていたのだろうか。

 「健気なねぇ」

 峠へ開いた杣道の先からは
陽と共に霧が流れ込んできた。

                             

◆赤良木峠
 杣道が降りた赤良木峠は
登り口から見た流れ落ちる
滝雲の中にある様だった。

 「石鎚山は雲の中」

頂上から見たら雲海かもな。

 「高知は晴れちゅね」

 そうやね。
晴れて暑いろうけど
もうちょっとの辛抱やな。

                 

◆近道に入る
 峠から入った三辻山への
近道にも雲が流れ込んでいた。

 「今日も
    レンブランド光線」

                             

 先回のブロッケンの妖怪は
いないけど静かでいい風景だった。

 林の上は秋の青空。
いま私たちは雲海の中にいる。

                 

 大陸の国と違って
複雑な地形を持つ島国日本は
ピンポイントの天気予想は難しいが
想わぬ風景を見せてくれる事もある。

 山高きが故貴からず。

山麓だから会える一期一会がある。

                     ねばりなき空にはしるや秋の雲  丈草