古の峠道に続く林道は
しだいに両脇の山が迫り
終点に近づき渓は深くなる。
◆秋兆す
北に迫るカヤハゲの樹々は
淡い赤や黄色が朝陽に浮かび
今年も秋の訪れを告げていた。
例年並みかなぁ。
◆渓へ下る
林道終点手前から渓へ下り
長く通った奥物部の森に入る。
山道は谷底を流れる長笹谷へ下る。
渓に射す陽は透明感を増してきて
これから落葉と共に谷底も明るくなる。
「ええ風吹きよんね」
ここで最初の一本立てた。
「鳥の囀りが近いね」
◆山懐に入る
杣人が架けた橋を渡り
白髪山からカヤハゲへ登り返す。
急峻に切れ落ちた地形を山道は上がり
朝陽が透かす樹々の葉が紅葉色に輝き始めた。
「葉の色が薄いねぇ」
適度に晴れて雨が降って
光合成が盛んなほど紅葉は濃くなる。
いやいや
淡い紅葉もいいかもよ。
憩ふ人秋色すすむ中にあり 橋本鶏二