「まだ早かったねぇ」
私達が期待していた山桜は
まだ芽吹きも迎えていなかった。
◆一期一会のこと
三辻山の自然林は
北斜面に広がっているため
日当たりが少なく雪解けも遅い。
次の楽しみやね。
◆物見遊山のこと
私達は山頂に拘りはなく
四季折々その日の天候で
気持ち良いところが目的地。
今日は眺望を求め山頂に上がった。
「よお見えるねぇ」
室戸岬の果てまではっきり見えた。
これも寒暖押し合う頃の一期一会だろう。
◆自然のこと
穏やかな山頂を後に
三辻山の自然林へ下った。
この森はほぼ極相に達し
単調な植生の群生があり
山樒が花期を迎えていた。
ただ人の手が入った山道沿いには
本来森にはない植生が根を下ろし
この日は芽吹きを見せてくれた。
「先週の霧雨の方が
風景はきれいやったね」
まあそれも贅沢と言うものよ。
◆風のこと
森の中のもう一つの森に入り
鳥の囀りが近くに聞こえはじめた。
この三辻のまほらは鞍部になって
気圧配置で北から風が吹き上がる。
これは春先も続く気象現象で
北斜面の芽吹きが遅れるもととなる。
ここから山道は南に周りはじめる。
山鳩の鳴きいづるなり春の空 松村蒼石