いつもの登り口は
今日も私達だけのようだった。
30年歩いて辿り着いた山道は
この様な静かな道が多くなった。
◆分け入る
「世の中にまじらぬとにはあらねども
ひとり遊びぞわれは勝れる」
良寛さんの言葉を思い出す。
◆目覚めるとき
「スイッチが入ったね」
いち早く目覚める柳が芽立つ。
日当たりのいい林道沿いは
木々が目覚めはじめた。
この柔らかい色合いに
毎年癒されている。
◆咲くとき
春の目覚めは
大地の草花から始まる。
それは地熱の伝導や
水の吸い上げの差と言われるが
私は高い木が待っているように思う。
それは下草にも大切な役割があり
自然の命たちはお互いに助け合い
森を形成していると感じるからそう思う。
◆巡ること
登山者は嫌がる雨は
4月に入って程よく降り
山は水を十分蓄えている。
次第に陽が射し込む森は
清明らしい命の輝きを見せる。
これから森の空気も変わる。
「また今年も
通わないかんねぇ」
ひたひたと夢のつゞきの木の芽山 矢島渚男