猿板

遊山黒子衆SARUの記録

山猫さんと「カンカケ谷」 承

吊り橋

 フスベヨリ谷に架かる
吊り橋を渡り森に深く分け入る。
風の通り道になる沢は気持ちいい。


◆沢が運ぶもの
 この谷もかつて沢登りを楽しんだが
H19の土石流以来一度も入渓していない。
しかし日本列島は隆起と崩壊を繰り返し
平野が形成され私達は豊かな恵みを得てきた。



これからも日本人は膨大な力を持つ
自然に頭を垂れて生きていくしかないだろう。


                    
◆残されたもの
 沢から山道を登り返す。
ここから国が作った植林帯に入る。
                
私たちはこの山域に30年通って
一度の手入れの事実を見たことがない。



この放置されやせ細った植林が倒れ
昨今の水害の大きな要因になっている。
早くそこに目を向けないと
子供たちへの負の遺産になりかねない。
                
◆変わらないもの
 「一本しましょう」
八丁ヒュッテでザックを下ろす。
この血税で立てられた小屋を
登山者は大切に使っている。



 植林に囲まれた無人小屋を過ぎ
奥物部の深い自然林に入ってゆく。
 「空気が変わりましたね」
                     


  真清水の音のあはれを汲みて去る  黒田杏子