国道を分け入るごとに
桜は見頃にかえってゆく。
それは時を遡っている様だった。
◆花の滝
集落中にしだれ桜が咲き乱れ
阿波一番と言われるしだれ桜の名所は
今年も山間を桜色に染めて待っていた。
民家の斜面にあるしだれ桜は
根元より下まで枝を伸ばし
それは花の滝の様に見えた。
◆夢の世界へ
次の桜がこの地区の真打ち
なおこは悲鳴を上げるかもよ。
標高約700mの川井峠には
約20本の古木のしだれ桜が
淡紅色の姿で迎えてくれた。
阿波の霊峰剣山と対峙する峠は
今が見頃としだれ桜が咲いていた。
その満開の桜の園は
まるで夢の中の風景だった。
さくら満ち一片をだに放下せず 山口誓子