この山域の南斜面にある
工石山登り口の上空の雲は
足早に北から南に流れていた。
◆登り口のこと
「冬アンダーで丁度やね」
標高約900mの登り口の
気温2℃は晩冬の気温に帰った。
防風着があれば万全だろうな。
さあ 行くか。
今日は低気圧が発達しながら
東海上に抜けるから風向きも
変化することがポイントだろう。
◆林道のこと
三辻山への山道は
昭和の頃廃坑となった
鉱山に続く林道から始まる。
「三椏が咲いた」
ジンチョウゲ科の落葉低木
葉の出る前に黄色い花が枝の先に咲く。
三椏もスプリング・エフェメラル。
「桜の開花情報だけ騒ぐ」
「桜」の語源「咲く」に「ら」が付き
複数形「咲くものたち」の説が私は馴染む。
日本人は桜が好きだからなぁ。
◆植林のこと
林道を別れた山道は
この山域の主峰工石山に至る
人が植えた林の登山道に入る。
「思ったより風ないね」
二つ玉の「だまし晴れ」かもな。
2つの低気圧の間に挟まれた領域が
高圧部になり一時風が止み晴れることもある。
「五竜遠見尾根で死ぬかと思った」
現に目の前で亡くなったしね。
道具持っても経験なければ意味ないし
経験も観光登山じゃ養えないだろう。
「無知がいちばん怖いと思う」
◆二次林のこと
山道は公園整備された後
風や鳥が運んだ種も根を張り
共生がはじまった二次林に入る。
いっぱい囀りが来たで!
「コゲラや!」
日本のキツツキ類中最小の一種。
羽毛に黒地に白色の細かい横斑がある。
森林にすみ日本各地に広く分布する。
南斜面に集まった命らが
北斜面の天候を教えてくれる。
「土佐水木
咲いちゅうろうか」
空も見たいから
杖塚にあがろうや。
三椏の花に光陰流れだす 森澄雄