「染まってますね!」
ほんの二週間前青々としていた
山頂部が秋に染まりはじめていた。
いっぺんに始めたな。
◆登り口のこと
「今日も静かやね」
登り口の気温11℃は
例年よりちょっと涼しい程度で
寒気は一度収まるように感じる。
さて 入ってもうか。
「これ山芋ですか!」
修験の山梶ヶ森の山道は
人が植えた杉檜の林から始まる。
「少しもらおうや」
◆植林のこと
「この黄葉はクロモジ」
「ほんま幹がそうですね」
幹が特徴的なクロモジは
紅葉も独特の色合いを見せてくれる。
ひんやりしてきた森の
空気に合う淡い色合やな。
そんな紅葉がはじまった
山道に秋の風が吹きはじめた。
葉に造形を残した虫や
慎ましく咲く花も持っている
森を成すための利他の役割に
目を向けこれからも歩きたい。
◆岩盤のこと
植林を過ぎた山道は
地形を成す急な岩盤に
根を張る自然林にはいる。
急な岩盤の僅かな窪みに
土壌を造り根を張る草木や
それらに共生する菌類も
秋の風景に移ろっていた。
「陽が射してきた」
日照時間の短い谷間に
下る陽射しも秋色になった。
◆滝のこと
岩盤を登った山道は
娘に化身した大蛇が棲むと伝わる
龍王の滝の元へ下りはじめる。
「イワタバコが染まった」
深山の滝に生きる一枚葉たちが
秋の澄んだ空気に色合いを添えていた。
いい佇まいになったなぁ。。。
岩をも溶かし海に流れ下る水は
森も里も海の命も養い山に帰ってくる。
海辺に多い竜巻に天に昇る竜神を見た
祖先の心は正しかったんだろう。
一枚の葉は命なれ岩たばこ 阿波野青畝