猿板

遊山黒子衆SARUの記録

仲冬の白髪山遊山 冬空

                             

 「まだ丸まってないね」

 剱山や三嶺に続く稜に乗る。
35年間見守ってくれた女神の山は
真新しい雪を纏い迎えてくれた。

◆空に出る

 「また 踏み抜いた!!」

 雪に遊んでもらったから
山頂まで3倍時間が掛かったけど
私も久しぶりにラッセルを楽しめた。

30年前は普通の苦労だったけど
今は道具の進歩で快適に登れるが
実際に雪の下を自ら体験した方が
Y'sの山道がより安全になると思う。

                 

◆頂に立つ
 誰も歩いていない新雪を漕いで
厳冬期の山頂なら無風と言ってよい
穏やかな1800m峰に立つことが出来た。

白髪山の魅力の一つ四方を囲む
剣山地の高峰たちの眺望を
今日は私達だけで静かに楽しめた。

西日本で最も美しいと言われる
三嶺も北にどっしり座っている。

 今冬は雪中泊出来たらいいな。

◆帰り道

 さあ 帰ろうか。

 昨年12月22日面河山に入山し
27日に遺体が発見された登山者も
下山時に遭難したと思われる。

 昨今道具が進歩し行動範囲が
広がった事は良いことだろうが
私は今も昔も山の遭難の原因の根底に
「成功体験の積み重ね」もあると思っている。

                                     

 「太平洋が光りゆで!」

例えば最初からスノーシュー
登り始めた方は雪崩など起こす
雪の層を知らないのでないか。

 「えぇ山ですねぇ」

加えて山の道具は使う経験を積んでこそ
本当の力と機能が発揮できるもので
経験が足りないと危険と思った方がいい。

                             

 そしてその経験で山を見て
使うべき時をきちんと見定める
道具によるリスク回避も大切だろう。

 さあ今年もいい体験出来たろうか。
新年もおっかなびっくりドキドキしながら

 Y'sよ次の高みを目指そうかね。

                   かぐはしき冬青空といふ奈落  柚木紀子