「私白髪山が好きです」
Y'sの背中がそう言ってくれた。
ほんと君は引きが強いわ。
◆飛び立つ
四国山地南の前衛峰となる
白髪山は太平洋へ下る山並を望む。
これは白髪ならではだろうと思う。
さて
ここからが本番だ。
登り納めの標高1770mへ
雪晴に向かって登ろうか。
◆静かな山道
「新雪が気持ちいいですね」
誰も踏んでいない積雪に
足跡をつけるのは気持ちいいが
雪質によっては登る労が増すもの。
昔は山麓から4時間かかる
ベテラン向きの深い山だったが
南面を巻く林道が開通してから
気軽に登れる日帰りの山となった。
しかし冬は高峰の南斜面が故に
深い積雪が車での進入を困難にして
入山者も殆どいない静かな山となった。
「先頭代わるわ」
◆積雪のこと
「こんなに楽なんですね!」
未踏の雪面を踏むラッセルは
複数の方が登る時間が早くなり
ルートも複数で判断できて安全だ。
「あの岩に真っ直ぐ!」
「今日はスノーシューでしたか?」
確かに今日の積雪は楽に登れるだろうが
Y'sはきちんとラッセルを経験した後がいい。
まだ笹が多少出ているとはいえ。
重いザックを背負って転げ落ちたら
勢いが付いて止める事は至難の業になる。
「また踏み抜いた!!」
この傾斜でこの雪なら無い方が安全だ。
たまには雪まみれもいいだろう (^_^)
◆稜に登る
山頂に登る斜面が
次第に緩くなりはじめて
積雪が増えるのは山麓から
雪が吹き上がるから。
この積雪層を体験するために
Y'sにはあえてピッケルを持たせた。
これは山の先達から教わったことで
共に冬山に入って私も実体験した。
「ここから直登するで!」
冬には冬の安全確保の道がある。
年の瀬に仲間と登る白髪山山頂は
どんな風景を見せてくれるだろう。
雪まみれにもなる笑つてくれるなら 櫂未知子