修験場であったことを伝える
古い鎖が架けられた巨大な岩を
今は階段を使って滝頭にあがる。
◆滝頭に上がる
この岩、石、木と苔むした倒木に落ち葉
その合間を清水が流れる調和の取れた造形を
人間が意図して作ることが出来るだろうか。
この上にも公が設置した木段があり
木段は止めた水でもろとも流れてしまうが
先人は流れてもそれなりの場所に収まる
石を使って道を造ってきたのもうなずける。
「休んで行くろう」
大岩の上には東屋が置かれている。
自然とはこの程度の関わりでいいと思う。
◆清水出流ところ
東屋で休んだのち
この森のまほらへ下る。
「紅葉始まったね」
日本人は清水が湧き出す処を
神聖な場所として祀ってきた。
水は命の源。
日本は雨雲を生む山があるから
水が豊かであることを先人は知っていた。
ここの水が涸れることはないだろう。
◆稜に出る
今日も山頂には行かず
奥ノ院に帰る道を下った。
稜線に出る階段を上がる。
「雲が早いね」
階段は森を抜け
北から流れ来る雲が見える。
振り返り山頂方向を見たら
根元から見えない葉色が見えた。
今年もいい色を見せてくれそうだ。
◆かえり道
さて 帰ってみるか。
寒暖一進一退繰り返すこの時期。
山の命も変化の時を迎えているが
朝と昼一日の寒暖差が大きい日が続く。
かつて祖先は草鞋や菅笠や蓑など
いま見れば本当に粗末な装備で
山に分け入り生きてきた。
今でも登山は天気がよければ
スニーカーや綿シャツでも出来るが
どれだけの「経験」と「身体」を
持つかで生死を分ける事がある。
私は道具の善し悪しより
そちらの方が大切だと思う。
さあ 次は
どこに行こうかね。
霜晴の山々空を拡げけり 茨木和生