「高知はいいなぁ」
土佐は南向きの山が海に迫り
平野は乏しいが自然の恵みは豊かだ。
◆高見を下る
高見山を下り鷲尾山を目指す
この眼下に私たちの街が迫る
高度感が私は何となく好きだ。
◆尾花の原
高見山と南嶺を結ぶ
広くなだらかな稜線も
江戸年号も刻まれた古い墓所。
供えた線香が引火するなどして
古くから何度も山火事を繰り返し
高木があまり育たない広い草原は
ススキたちが大地を守っている。
「ススキ好きです。
いい風景ですね」
◆庶民の山
山道は草原を過ぎ雑木林に入り
盛りを迎えた紅葉が迎えてくれた。
この森は古くから農業利用がされ
椎茸のホダギや椎の実などの採取
落葉など集めて肥料にした聞いた。
また高知大空襲で身元が解らないご遺体を
ここで共に埋葬したという悲しい歴史もあるが
確かに庶民に寄り添ってきた山と言えるだろう。
◆鞍部に下る
山道は鷲尾山に
取り付く鞍部に下る。
ここからはかつて土佐藩の
薪を賄ったお留め山だった。
「これはサカワサイシン」
根元に咲かせた花が実となり
コロコロ転がって増えるしかない
分布速度が非常に遅いことで知られる。
どうやってここに来たのか
ここは他でもなかなか会えなくなった
貴重な植物が生きている不思議な場所。
「この峠は
色んな道が交わるがよ」
最後に一本立てようか。
花薄風のもつれは風が解く 福田蓼汀