カヤハゲの尾根を巻き
天に聳える姿を見せた三嶺は
やはり雪は見えない。
◆谷へ下る
山道はカンカケ谷へ下る。
ここは急な斜面を横切り降りるが
下草を失ってから土壌が流れ始め
元あった道は殆ど埋まっている。
◆沢に下る
日当たりが悪い谷底には
多少固まった雪が残っているが
それも寂しい風景に見えた。
これ以上すすんでも
風景は変わらないだろう。
今日はここで終わりにしよう。
◆大地に座る
山道はここから
カンガケ谷の源流に続き
峠に上がり稜線に出る。
その始まりの徒渉点付近に
どこからも見えないナロがあり
今日はここで昼にしよう。
食事を終え寝転がると
陽の光が気持ちよく降り注ぎ
野鳥の囀りも盛んになり
恋の季節が始まったことを知る。
そんな静かに変わりゆく自然の中に
無心で身を投じていることが気持ちよく
やはり森は母の懐の様な存在なんだろう。
うとうとと生死の外や日向ぼこ 村上鬼城