源流に生きる桂の老木。
以前は鬱蒼とした風景の中に
どっしり根を下ろしていたが
その姿は過去のものになった。
◆沢を詰める
桂の大木を過ぎれば
急峻な岩場の登りになる。
この道も足場が崩れはじめ
危険な箇所が増えている。
◆風が吹く
標高が上がり視野が開け
落葉した森は対面の風景を見せる。
沢は伏流し聞こえる音は
水のものから風の音に変わる。
随分降ったようやね。
◆残雪を踏む
岩場の急登を終えた
鞍部に続く横道は
吹きだまった雪が
雨で堅く締まっていた。
「これは雨氷やね」
どうもそのようだね。
◆北風に向かう
カンカケ谷が生まれる
水場に着けば稜線は近い。
目指す鞍部が集めた北風が
強く吹き付けはじめた。
北風にたちむかふ身をほそめけり 木下夕爾