カヤハゲの登り返した山道は
長笹谷を別れ支流ヌル谷に入り
30年通った森のまほらに至る。
◆森のまほら
ここヌル谷のナロは渓水が運んだ
土砂が長年かけて滞積した森の平坦地。
高山の南にあり雨が多い土佐の山には
この様な平坦地が多く点在している。
「おぜんざいどうぞ」
ナロにある東屋での休憩で
Y'sが荷揚げた心を頂いた。
「陽が射してきたで」
暖かいことはいいことだな。
◆眠る森
Mothertreeに会いに行こうか。
今日も行けるとこまでのつもりだった。
雪が降れば風景は一変する。
地形も道も覆い隠してしまい
目印の木を倒すことだってある。
雪山には魔が潜んでいる。
そして山で暮らすものと違って
私達には生きてゆくために
山にはいる理由などはない。
「何かあっても」ではなく
「あってはならない」
山には常に自己責任を背負って
入らなくてはならないと思っている。
◆森の母
「この木がそうで」
樹々が葉を落とし風景が変わって
初めてではないY'sは解らなかった。
「やっぱり大きいですね」
tochikoが通い続ける
栃の大木の根元に上がった。
ここで何百年も生きた栃は
今年も沢山の実と葉を落として
森の命を養ってくれた。
今日はここでえいろう。
大空に伸び傾ける冬木かな 高浜虚子