「染まったね~!」
登り口から見える山頂部から
ここまで一気に下ったようだ。
急に冷えたからねぇ。
◆頂を見る
登り口の気温9℃は
二週間前と変わっておらず
訳があっての早駆けのせいか
まだ誰も訪れていなかった。
◆人工林
「クロモジは黄葉」
緑の樹皮の黒斑を文字に見たてた
クロモジの枝振りが黄葉に踊る。
いい佇まいだな。
登り始めの手入れされた杉林は
日差しが程よく林床に届き
下生えの灌木や草花がよく茂る。
人が植えた叢林。
本来の姿は美しいものだ。
◆自然の森
程なく山道は杉林を抜け
まだ陽が射さぬ黄葉に分け入る。
自然にない直線の造形も
落葉を纏えば風景に溶け込む。
先人の自然への関わりは
この程度だったように思う。
◆深山の滝
黄葉の山道は急登を登り
深山の滝の元に下りはじめる。
大蛇に化身した娘が棲むと伝わる
落差約20mを下る龍王の滝も
僅かであるが紅葉を纏っていた。
紅葉を映す信仰の山の清水は
里を潤しやがて大海に帰り
また雲となって山に帰ってくる。
ただその繰り返しが命を育んできた。
黄葉の一樹に山の影及ぶ 嶋田麻紀