西熊林道の三椏も満開だった。
ジンチョウゲ科の落葉低木。
樹の靱皮繊維を和紙の原料とする。
春三叉の枝先に総状の筒形小花が咲く。
◆分け入る
林道登り口の気温は11℃
曇り空のせいか少し寒く感じたが
広大な奥物部の森を覆う雲は薄く
植物の撮影に丁度いい光量だ。
「西熊は雲の中やね」
今日の気圧配置で四国は
太平洋側から崩れ始めるが
高山は上空の雲を止める。
◆冬の景色
節は仲春の春分に入るが
まだ奥物部の森は冬景色にある。
ただ落葉樹をよく見れば
若い枝や越冬芽は春の淡い色を
見せ始め樹々の目覚めを感じさせる。
この天に向かって
大きく枝を広げる欅の姿も
この時期だけ目に付く風景だろう。
◆雪解け水
3月四国の高山は残雪期に入り
冬の雪は固く締まった残雪となる。
登山者にとって最も怖いのは残雪で
先日も残雪による死亡事故が発生した。
そんな登山者にとって怖い雪は
冬に山を覆い寒さから山の命を護り
春はゆっくり融け流れて里を潤す。
自然にとってなくてなならないもの。
「見て見て 椎茸で!!」
雪解けと共に春菌も目覚め
沢の苔も萌え始める。
そんな自然を形成する命(群)は絡み合い
人間が大脳で考える想い(個)は関係なく
宇宙全体で繋がっているように感じてきた。
濃かに弥生の雲の流れけり 夏目漱石