猿板

遊山黒子衆SARUの記録

天辺で酒を呑む 森で想う

鳥獣保護区

「あれっ?また道を間違えてしまった・・・。」
この山域に通い20年になる私が
何度もルートを見失うほど
風景は別ものになっていました。
◆樹木が作る命の土を草が守っていた。
 林床にあった笹や下草が
大地に毛細血管の様に張った根で
水を吸い上げ土壌を固め守っていた。

しかし林野行政の植林により
住処を追われこの森に集中した鹿達が
林床の植物を食べ尽してしまったため
安定を失った土壌が流れ始めている。

◆一体何が起ころうとしているのか。
 「 朝焼け小焼けだ 大漁だ
   大羽鰮の 大漁だ
    浜は祭りのようだけど
      海の底では何万の
   鰮のとむらい するだろう 」  金子みすゞ

 水は濁れば浮力が上がり力を増し
その力は計り知れないものがあります。
先月末四国を襲った季節外れの大雨は
5月の24時間降水量観測記録を更新しました。

◆一体人は何と戦っているか。
 問題の本質が見えていないだろう人達の
物言わぬ自然相手の戦いが続いている。

 自然に銃口を向け網を張り続ける。
ずっとこんな事を繰り返して
いつか解決の時が来るのだろうか?

 「どんなに小さい命でも
   どんなにもろい命でも 必ず輝く時がある。
    人間と同じ赤い血が流れていますから。 」  中島 潔

◆憂いを感じること。
 この森は百年単位で出来たものではない。
これからこの森とこの国には
未だかつて誰も経験したことがない事が
起こる嫌な予感がしています。

せめて今この人達が善意で森に持ち込んでいる
これらの大量の物資が将来の憂いにならない事を
非力な私は山の神に祈ることしか出来ません。

                  身の丈を揃えて二人静かな  倉田 紘文