山頂部に近づき再び雨が降る。
ゴアを羽織っても汗で濡れるため
小雨ぐらいなら着なくても同じこと。
◆隠れ家
いい時間にヒュッテに着いた。
「この雨に登ってこられたか」
剣山本営の神官が呆れて言った。
◆心交わす
「降りようしたところじゃった
和宏さんは久しぶりじゃの」
今日のカレーライスは美味しかった。
◆かえり道
和宏さんも同じだろうが
どの山に登ったなどの話は興味がない。
無心で自然の変化に目を向けること
人に会うことに喜びを感じている。
同じ山でも四季折々分け入り
自分の目に映じ耳に聞こえ
肌に感じるものをすなおに観察し
そこから多くのものを学びたい。
そして私はこれからも
どんな土砂降り大雪だって
会いたい人に会いにゆく。
そんな余生を過ごしたいと思う。
秋霖に濡れて文字なき手紙かな 折笠美秋