猿板

遊山黒子衆SARUの記録

白露の剣山遊山 結

剣山本営

 山頂部に近づき再び雨が降る。
ゴアを羽織っても汗で濡れるため
小雨ぐらいなら着なくても同じこと。


◆隠れ家
 いい時間にヒュッテに着いた。
「この雨に登ってこられたか」
剣山本営の神官が呆れて言った。



◆心交わす
 「降りようしたところじゃった
   和宏さんは久しぶりじゃの」


            
 今日はこの山小屋に
土産を渡すためだけに登ってきた。



◆口福
 「貴方が来たら乾杯せなのぉ」


                  


 今日のカレーライスは美味しかった。


                
◆かえり道
 和宏さんも同じだろうが
どの山に登ったなどの話は興味がない。



無心で自然の変化に目を向けること
人に会うことに喜びを感じている。


                
同じ山でも四季折々分け入り
自分の目に映じ耳に聞こえ
肌に感じるものをすなおに観察し
そこから多くのものを学びたい。



そして私はこれからも
どんな土砂降り大雪だって
会いたい人に会いにゆく。
そんな余生を過ごしたいと思う。


                 


  秋霖に濡れて文字なき手紙かな  折笠美秋