猿板

遊山黒子衆SARUの記録

かわずの四方山話 思い回す ふたたび 2

ふたたび・・・の、ふたたび

長次郎谷雪渓・・・
7月にこんなにびっしりと雪が詰まった
谷を見るのは生れて初めて。
一歩進んで、一歩滑る(全然、前に進まへん・・・)。
アイゼンなんてつけさせてくれず、
キック&ステップ(蹴りこんで階段を作ること)で登る。
登るというより這いずる。
熊の岩辺りになると、一歩ごとに
ふくらはぎが硬直して足が痙攣する。
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「滑り落ちたらよう止めるかな?」
「滑落停止は、昨日習ったばかりやから、やっぱ無理やろなぁ・・・」


 山に入ってもう2週間。
この頃になると、あまり生死を意識しなくなる。
意外と冷静(投げやり)にすべてを受け入れている自分が居る。
自然と同化・・・無の境地・・・んな訳ないか。


「滑りそうになったら、とりあえず先輩のザック掴んだろ・・・」



 思いおこせば恵まれた山デビューでした。
十数年前、かわず社会復帰の頃、
地元・山の会の長老と一緒に飲んでいる時・・・。


「かわず、お前は大学の山岳部あがりか!」



「はい。大学は放校になっちゃいましたけど・・・」



「そりゃ、恵まれとるのぉー」



「えっ、はぁ〜」



「わしは、冬の槍に登るのに4年かかったわ。
 最初の年は、厳冬の上高地にびっくりして帰ってきた。
 次の年は、横尾まで行って引き返したかな。
 その次は、大曲あたり・・・4年目でやっと頂上に立てたわ。
 お前は、最初っから剣のてっぺんに行けてホンマに恵まれとるわ。」



「・・・」

 長老はもうすぐ80歳。




 自分が道具屋稼業をはじめてまだ18年。
プロの道具屋を目指しています。まだまだ未熟者です。

ホントに自分は恵まれた人間です。
よき人々に囲まれて、よき自然を感じられて、
日々機嫌よく生かされております。


 昔も、そして今も・・・。



                   しみじみと立ちて見にけりけふの月  鬼貫