あの日山のお父さんと
仲間達で作った橋は朽ちて
今では渡る者はいない様です。
◆夢の中へ
標高1,200mの宿を越えれば
山毛欅の世界に変わります。
「懐かしいね河童ちゃん」
そうやね。ここは何も変わっていないね。
◆記憶の中へ
あのブナの木は生きていた。
その姿に長い風雪を刻んだ老木に
人の命はあまりに短すぎるのだろう。
かつて休みの半分以上は
この道を登り丸山荘に通っていた。
荷揚げをしたり草刈りしたり
雪が溶ければ道の整備もあった。
しかし今は全て思い出の中のもの。
◆真夏の夢
丸山荘への最後の直線にある
懐かしい木の階段も朽ち始め
低木が茂った道は薄暗くなっていた。
あの頃はここまで来たら
薪ストーブの香りが漂い始め
勢いよくクロが駆けて来た。
そんな懐かしい思い出の中に
あの日のお母さんと私が見えた。
あの夢のような日々は
もう二度と帰ってこない。
或時は谷深く折る夏花かな 高浜虚子