「風の音が聞こえる」
道標の様に開いたシダに導かれ
この森の最も深い処に入ってゆく。
鞍部は風を集めるきね。
◆大海を観る
稜線に立つ祠のあった大岩は
周りの潅木が葉を落としはじめて
どっしり座った姿を現しはじめた。
「海が見えるで」
視野の開ける峠を覆った雲はなく
土佐の山らしい風景が開けて見えた。
「やっぱり峠は滝雲やね」
◆森の中のもう一つの森
この稜線の鞍部になる処は
この森で最も優れた「まほら」で
森の中のもう一つの森と感じている。
ここは鳥が多いなぁ。。。
「さあ おしまい」
伐採で南の視野が開けだが
周回が出来なくなって終点になった。
でも風に乗る鳥には良いことだ。
◆雲に入る
「霧が出たね」
気圧差で北山麓から登った雲が
森を覆い紅葉を幻想的に見せてくれた。
今日の一期一会だな。
今日の天気予想を観て止めたら
出会うことが出来なかった風景。
山の空読みは危険回避だけではなく
変化の時に会える風景のためもある。
僕らはある出会いを境にして
人があまり通らない道を選んだから
大きな違いを生み出せたと感じている。
有り難いことだよな。
◆かえり道
四方を海に囲まれた
温帯にある日本列島の自然は
柔らかく多様な命の住処になり
変化に富んだ風景を見せてくれる。
江戸末期 訪れた他国の人は
穏やかな日本人の暮らしと
美しい自然に感動したことを
異口同音に記録し残している。
「石鎚さん見えたね」
そんな世界で比べるものがない
永く続いている日本に感動を覚えて
今も沢山訪れている様に感じている。
「えい遊山やったね」
ドンピシャで
変化の時に出会えたな。
「おでんはじめたが?」
「昨日から仕込んじゅうき
よかったら食べて行きや」
良かったらどころです!
「雨は降らんかったかよ」
「最初ちょっとだけね」
「そりゃあ良かったわ」
何もかも有り難いことです (^_^)
秋の雲山高ければ高く飛ぶ 上田五千石