猿板

遊山黒子衆SARUの記録

晩夏の三辻山遊山 夏草

                                                               

 「これはスジアゲハ」

 夏に見られる大型の蝶のこと。
色地に黄色などの複雑な模様を持ち
大きく美しい翅の黒揚羽などもいる。

◆登り口のこと
 僕らの山歩きは登り口の
開いた空の観天望気から始まる。

 西から薄い雲の動きは遅い。
今はこれだけで十分だな。

 「ブヨいないね」

 標高約900mの気温は30℃
陽射しも風も弱く気温が高い。

 大雨で幼虫が流されたんだろう。

                                                   

◆林道のこと
 三辻山への山道は昭和の頃
廃鉱した鉱山の林道から始まる。

 ウエアは「夏用」と言っても
日々気温や風も湿度も違うもの。

まず速乾性だが早く乾けば
いい訳でなく表皮で乾かして
気化熱を奪う構造が必要なので
僕は吸水するメッシュ構造は着ない。

 

 「どうも昨日夕立やったね」

そして湿度と風や気温によっては
ある程度の保温力を持つことが大切で
これを誤ると夏でも低体温症に陥る。

                       

◆林道のこと

 「夏草は盛りやね」

 林道を別れ工石山登山道に入る。
ここは手入れされた杉檜の植林で
陽も風も届き林床に命が根を張る。

 「柄しか残ってない模様」

 虫も造形に参加する食い跡。

草木は虫に食べられる分も加えて
その年の葉を出していると言われる。

                     

 草木だけでは生き残れず
それは虫にしても同じこと。
調和の取れた森は常に「利他」
僕も見習わなければと思う。

 「涼しい風」

 山道をいくつか横切る渓が
水と共に涼風を流してくれる。

 この時期は冷やすことが大切だな。

                                                       

◆二次林のこと

 「囀りが賑やかになった!」

 山道は植林を抜け自然休養林に
整備されたのちに鳥や風が運んだ
種が根を張り共生した二次林に入る。

 「アサギマダラが好きなヒヨドリ草」

 水引も赤い小さな花を咲かせ
森の季節は今年も秋に移ろう。

 今年も帰って来るな。

              

 「杖塚暑いろうね」

 けど今日は
   空読みが大切やきね。

                   夏草や手ふれて見たき仏の朱  加藤楸邨