猿板

遊山黒子衆SARUの記録

最後の桜追う三辻遊山 山の桜

                             

 「見て! 咲いちゅうで!!」

 足下に落ちた花弁に気付いてから
tochikoが追う深山の背の高い山桜は
満開の花を咲かせ彼女を迎えてくれた。

◆深山の桜
 日本固有種の山桜は
永く日本人と共に生きてきた。
高く天に向かって伸ばした枝先に
若葉と競う如く咲く花が見て取れた。

 天気見てあきらめてたら
午後の雨で散っていただろう。

 待ちよってくれたがよえ。
山頂行って上から観てもうや。

                                                   

◆山頂に立つ

 「気持ちがえいねぇ」

 標高約1300mの頂に出る。
少し流れが早くなった空の雲が
変化が近づいている事を告げる。

                       

 雲の尻尾が降り始め
南斜面で感じた湿った風は
標高差もあるが涼しく感じた。

 寒気が押してきたかな。

 「他の山桜も咲いちゅうね」

この森には山桜が多いなぁ。

 さあ 森に降りようか。

◆三辻の森
 先回より若葉が多くなった
連休後半の雨で新緑が進んだようだ。

           

高木も中低木の同時に葉を広げ
三辻の森は新緑が二層になる
これは四国で他にない風景だろう。

その森の木々をよく観れば
高木の幹が細いのは森が若い証で
かつて炭焼や生活の薪取りなどの
先人の関わりを感じることが出来る

 

 自然に生えたブナと樫が並ぶ
暖温と冷温樹木が混生しているのも
先人の関わりもあると私は思っている。

                                                   

◆森の中のもう一つの森

 「空気が変わったね」

 緑のトンネルとなった杣道を
この森のまほらに向かい分け入る。

 森が深呼吸しているようだ。

 かつて祠を祀ってあった大岩も
樹々の葉に覆われお隠れになった。

                 

 帰って来た囀りが響く
この森のまほらに辿り着いた。
山を下りていた姿の見えない鳥らも
ここを目指し帰って来るんだろうなぁ。

                  ここにありここにもありと山桜  右城暮石